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岡崎エリアで活躍する人へのインタビュー

岡崎エリアで活躍されている方に、岡崎の魅力と、岡崎エリアで展開されている活動・イベントについて語っていただきました。

SAKI
MATSUYAMA

松山 沙樹さん
京都国立近代美術館
学芸課 特定研究員(教育普及担当)

目指すのは、“真にすべての人が楽しむことのできる街”

私の1日は、白川のせせらぎで始まります。

白川沿いの風景

京都国立近代美術館で働き始めて6年になります。静岡県出身なのですが、京都の大学に通っていた私にとって、岡崎は馴染みのあるエリアの一つでした。

今ではすっかり生活圏の一部。一番のお気に入りは、地下鉄東山駅から当館まで、白川沿いを歩く朝のひとときです。春は桜、夏はホタル、秋は紅葉・・・。四季折々の美しい自然の中に、犬の散歩をしている方がいたり、釣りを楽しんでいる方がいたりと、さまざまな日常が溶け込む場所。あのゆったりとした雰囲気と白川のせせらぎに包まれると、心が落ち着きます。

美術館の南に流れる疏水より撮影 撮影:小川泰祐

幅広いコレクションが、京都国立近代美術館の魅力。

当館の特徴の一つは、多様なコレクションにあります。西日本の美術に重点を置き、日本画や洋画はもちろん、京都という土地柄、陶芸、染織、金工などの工芸作品を数多く所蔵。日本の作家に影響を与えた海外作家の作品も有しています。

さらに、そうした約1万3千点にのぼるさまざまなジャンルの所蔵作品を、4階のコレクション・ギャラリーにて、年間を通じて展示していることも大きな魅力です。年に5回ほど、研究員が設定したテーマに沿って作品を入れ替えているので、季節が変わるごとに訪れていただくと、違う作品に出あうことができます。

コレクション・ギャラリーに来られたら、ぜひ、同じ階の休憩スペースにお立ち寄りください。東側全面に窓が配されていて、岡崎の街並みと東山連峰を一望できる絶好のビュースポット。平安神宮の大鳥居が目前に迫り、側面の意匠まではっきりと見ることができます。

自分なりのスタイルで、自由に作品を味わって。

ライヴ・パフォーマンス「ノイズレス/サウンドレス」2007(平成19)年

私自身は、教育普及事業に携わっています。小・中・高等学校における美術館を活用した学びをサポートする「学習支援」として、セミオーダー形式で活動をデザインしたり、家族向けや子ども向けのワークショップを企画・運営したりしています。そして、それらを通して強く感じるのが、「作品の鑑賞の仕方や美術館の楽しみ方には正解がない」ということです。

子どもたちは、美術や作家についての豊富な知識はありません。それでも、色あいや形、あらわされたモチーフなどに興味を持ったり、描かれたものを見て過去の経験をふっと思い出したり、さまざまな角度から惹かれる作品を見つけます。私は、「どうしてこれが気になったの?」と問いかけながら、一緒に作品を観たり、作品について解説したりしています。

「美術館は敷居が高い」というイメージをお持ちの方は少なくないと思いますし、「知識がないのに行ってもいいの?」といった声もよく聞かれますが、こういうふうに鑑賞しないといけない、こういうふうに楽しまないといけないという正解はありません。

たとえば前述の4階・休憩スペースは無料ですし、まずは景色を楽しむために来てくださってもいいんです。そしてもし、その時に開催している展覧会やコレクション・ギャラリーのテーマを見て「面白そう」と感じたら、ふらっと展示室にも立ち寄ってみていただければと思います。

あらゆる方に美術館に来ていただくことが、教育普及事業の目的の一つ。特に美術にあまり興味がない方、敷居が高いと感じている方、小さなお子様がおられて美術館に行くことを躊躇している方などに、気軽に来ていただけるようなきっかけや機会を作りたいという思いがあります。今後もいろいろな切り口から、より多くの人とつながるための企画やプログラムを考えていきたいと思っています。

CONNECT⇄

障害の有無をこえてつながり合う『CONNECT⇄ 』を開催中

岡崎エリアでは、12月3日~20日までの18日間、文化庁委託事業『令和2年度障害者による文化芸術活動推進事業』として、岡崎の美術館、劇場、図書館、動物園などの施設による連携のもと、『CONNECT⇄ 』というプログラムを展開しています。

各施設に用意されているのは、障害のある方による作品の展示や、身体感覚を使った作品鑑賞プログラムなど、誰もが参加できるプログラム。障害のある方を一方的に支援するものではなく、障害の有無にかかわらず、触ったり、音を聴いたり、想像したりすることを通じて、参加者の方はもちろん私たちも一緒に、「芸術や文化を楽しむとはどういうことなんだろう」ということを考えたいという思いがあります。

この『CONNECT⇄ 』のコンセプトは、当館で2017年から行っている取組『感覚をひらく―新たな美術鑑賞プログラム創造推進事業』の考え方と近いかなと感じています。『感覚をひらく』の根底にあるのは、「目の見えない方、見えづらい方と一緒に美術鑑賞を楽しむにはどうしたらよいのか」という問い。立体作品であれば、一緒に手で触って意見交換をしながら鑑賞します。絵であれば、目の見える方が見えない方に対して説明した後、お互いに言葉を交わしながら味わいます。そうやって一緒に作品に向き合うことで、今まで知らなかった、あるいは気づかなかった作品の魅力が発見できるのではないか。そういうことについて、皆で考えることを大切にしています。

『CONNECT⇄ 』は、さまざまな施設のプログラムを無料で楽しめる魅力的なイベントです。紅葉の時期は終わりましたが、たくさんの方に岡崎に来ていただいて、参加者同士がつながり合い、気づきを与え合う機会となればうれしいです。

誰にとっても訪れやすい施設・街となるために

今回の『CONNECT⇄ 』の開催は、私にとって、そして岡崎全体にとって、大きなプラスをもたらしてくれたと感じています。

それは、岡崎の各施設が当館と同様の問題意識を持っていることを、互いに知ることができたということ。たとえばロームシアター京都では、耳の聴こえない方が観劇に来られた際の対応をテーマに、研修会を行っていたそうです。情報交換ができていれば私たちも参加し勉強させていただけたかもしれませんし、『感覚をひらく』で培ったノウハウの中で役立つことがあれば、共有できたかもしれません。

今までは当館単独でワークショップやイベントを開催していましたが、これからは、他の施設と連携し、合同企画として、今までとはちょっと違う、新しい取組を展開できるのではないかとワクワクしています。

また岡崎の施設がそれらの情報と問題意識を共有し、一体となり、ノウハウをシェアすることで、もっと大きなムーブメントにしたいという思いがあります。『CONNECT⇄ 』のような取り組みが当たり前になれば、障害の有無にかかわらず、すべての人にとって魅力的な街として、岡崎を発信できるのではないでしょうか。

一方、人の流れが止まったコロナ禍で実感したのは、地域の方々が気軽に繰り返し訪れることができる、地域で愛される存在となることの重要性です。それぞれの施設が愛される存在となることで、真にすべての人にとって、いろいろな楽しみ方ができる街へと進化することができれば、素敵だなと思います。

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