私と岡崎とをつないでくれた『岡崎さくら・わかば回廊十石舟めぐり
私自身が旅行業に携わるようになって35年あまりになります。岡崎と深く関わるきっかけとなったのは、「京旅(京都府旅行業協同組合の通称)」が展開する事業『岡崎十石舟めぐり』でした。京旅は1983年、京都の中小旅行事業者が「地域貢献・地域振興」と「安心安全、快適な旅行の提供」を目的に設立した団体で、現在は当社を含む51社が所属。2019年より、私が理事長を務めさせていただいています。
岡崎における十石舟めぐりの始まりは、2003年、京都府・大阪府・滋賀県の琵琶湖・淀川流域で開催された『第3回世界水フォーラム』の記念行事です。好評だったため、翌年には京都市の事業として実施されました。京旅が手掛けるようになったのは2005年からです。ミッションは、京都市における琵琶湖疏水の歴史とその役割を理解してもらい、より多くの方々に楽しんでいただく、また収益性のある事業として確立すること。私も組合員として、その一端を担うこととなりました。
十石舟の運航期間は3月下旬から5月上旬までの40日ほどで、2005年時点での利用者数は約9,000人。事業として実施するには1万5,000~1万8,000人の方にお越しいただく必要があるため、毎年のようにバージョンアップを行ってきました。12人乗りだった舟を28人まで乗れるよう造船したり、出航の間隔などを調整し効率化を図ったり、岡崎のライトアップやさまざまな施設とタイアップしたり・・・。地道に努力を重ねた結果、2015年に2万人を突破。京都の春の風物詩と言っていただけるまでに成長させることができました。実は2020年には、誰もが知るハリウッドスターから貸し切りの予約が入ったんです。新型コロナウィルスの影響で来日・運航とも中止となり残念ながら実現しませんでしたが、『岡崎十石舟めぐり』の素晴らしさが世界の人々にも伝わっているという証。本当に嬉しく思いました。
『岡崎十石舟めぐり』のさらなる満足度アップを目指して
『岡崎十石舟めぐり』の最大の魅力は、疏水沿いの桜の美しさを堪能できることです。京都でも数少ない、間近に水面に映る桜を楽しめるスポットの一つでしょう。特にピークの美しさは、個人的には京都ベスト5に入るくらいだと思っています。コロナ禍で利用者の方が少なかった2020年の春、本当に久しぶりに舟に乗ったのですが、その美しさをあらためて実感しました。おすすめは、桜の時期に合わせて約2週間限定で実施される、朝の運航。朝は静かで清々しいですし、まだ人が少ないので、桜を独り占めしているような感覚に包まれます。例年行われる夜のライトアップは楽しみにしてくださっている方も多いと思いますが,今年はコロナ禍のため,桜のライトアップと夜間運航は中止し,昼間の運航のみ行います。舟から見上げるライトアップされた夜桜は絶景です。コロナ禍が落ち着いた暁には多くの方に楽しんでいただきたいですね。
そしてもう一つ、十石舟めぐりはもちろん、十石舟めぐりと京都散策を組み合わせたツアーにも、京都や岡崎、琵琶湖疏水の歴史に精通したスタッフが付き添い、生の声でガイドを行っていることも大きな魅力。運航スタッフは約40日間の契約となるのですが、ほとんどの方が毎年継続して来てくれています。「十石舟めぐりのために、なぜ40日間空けてくれるのか」と聞いたところ、「世界中の方、全国の方に感動していただけるのがうれしくて、楽しみで仕方ない」という返事が返ってきました。心を込めたおもてなしが実践されているという自負があります。
目下の目標は、桜の時期だけでなく青葉の時の良さを知って頂き感動して欲しいです。少しずつではありますが、美術館をはじめ今まで以上に多くの周辺施設・飲食店との連携を実現すべく、交渉を進めているところです。また今後、そうした連携施設の混雑具合を、乗船場でタイムリーにご案内できるようなシステムの導入も検討しています。
2021年は『岡崎さくら・わかば回廊 十石舟めぐり』として、3月26日(金)~5月5日(水・祝)まで実施します。乗船券はWebでの事前購入も可能ですので、ぜひ京旅のホームページをご覧ください。
四季を通して1日楽しめる。それが岡崎の最大の魅力
『岡崎十石舟めぐり』に携わってきた日々は、私にとって、岡崎の魅力を発見する日々でもありました。桜はもちろん、紅葉も素晴らしいです。また個性あふれる施設も、美味しいお店も、徒歩圏内にたくさん集まっています。つまり、「1年を通して1日中楽しんでいただける街」なのです。
ただ、その良さをまだまだ伝えきれていないのでないかという思いがあります。岡崎のどこかをピンポイントで訪れ、そのまますぐに別の街へ移動されているという方は、少なくないのではないでしょうか。十石舟めぐりだけを目的に岡崎を訪れる方も、一定数見られます。また十石舟めぐりのスタッフに、「ご飯を食べたいけれど、おすすめのお店は?」「これくらいの予算で○○を食べられるところを教えて」「次にどこへ行ったらいい?」と聞かれる方がとても多いんです。
これは言い換えれば、岡崎という街のポテンシャルの高さ。『岡崎コンシェルジュ』ならそれらの情報が集約されていますし、各施設によるイベントや飲食店の情報を詰め込んだ年2回発行の岡崎総合パンフレット『岡崎手帖』も閲覧できます。『岡崎手帖』は十石舟めぐりの乗船場でも配布していますが、京都旅行の計画を練る段階で手に取っていただくのが一番。『岡崎コンシェルジュ』や『岡崎手帖』を活用し、ご自身やご家族、グループにぴったりの“岡崎で贅沢なひとときを過ごすプラン”を見つけていただければうれしいです。
京旅では例年、十石舟めぐり以外にも、京都の旅行会社が提案する京都の旅「じも旅京都」として、岡崎のツアーを提案しています。その一つとして以前、浜大津から琵琶湖疏水記念館まで琵琶湖疏水を歩く約300人規模のツアーを継続的に実施したところ、いつでも自由に歩けるコースとして広く知られるようになり、すっかり定着しました。また、単発のイベントとして企画された十石舟めぐりを続けてきたことにより、『第3回世界水フォーラム』以前はただ水が流れているだけのものだった岡崎の疏水が今や、国内外の人々を強く惹きつけるスポットとなっています。旅の続きをどのように導くのかを考え、そのきっかけを作ることが京旅の役割。そう胸に刻み、今後も京都市や各施設との連携のもと、『岡崎十石舟めぐり』のさらなる持続化と満足度向上に取り組むことで、地域に貢献していきたいと考えています。